こんにちは。元学校給食調理員のテルオ(@undoteruo)です。
引用:朝日新聞デジタル
2月17日に東京都立川市で発生した集団食中毒事件に加え、 和歌山県御坊市、東京都小平市で発生した集団食中毒は全て、「 東海屋」 の製造した焼き海苔(刻み海苔) によるノロウイルス食中毒が原因と特定されました。
しかしノロウイルスの発生元は、 東海屋が業務委託している刻み海苔加工会社 「いそ小判海苔本舗」と特定。
いったい、いそ小判海苔本舗のどこに問題があったのかと、 これからの学校給食の焼き海苔使用メニューはどうなるのかについ て話していきたいと思います。
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もくじ
これまでに分かっている「いそ小判海苔本舗」の焼き海苔( 刻み海苔)について
東京都立川市の市立小学校7校で2月、約1100人の児童らが症状を訴えた集団食中毒の原因が、 給食で使用された刻みのりから検出されたノロウイルスと分かり、 驚きが広がっている。 のりは製造過程で加熱されてウイルスが死滅するイメージが強いが 、今回は加熱後の作業で混入したとされており、 食品加工の衛生管理に警鐘を鳴らす形になっている。【野倉恵】 引用:朝日新聞デジタル
今回の東京都立川市、和歌山県御坊市、 東京都小平市の3市で食中毒の原因となった刻み海苔は、「 東海屋」が製造し、「いそ小判海苔本舗」が加工したものでした。
和歌山県御坊市、東京都立川市、 東京都小平市の3市で共通して使用していたこの刻み海苔。
この3市で検出されたノロウイルスの遺伝子データと、「 いそ小判海苔本舗」 で検出された遺伝子データが一致したことから、 この3市のノロウイルス集団食中毒は全て、「いそ小判海苔本舗」 が原因であったと確認されました。
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焼き海苔(刻み海苔)からなぜノロが?その感染経路とは?
ノロウイルスは 「いそ小判海苔本舗」 の海苔の裁断機付近とトイレなど8カ所から、 同じ遺伝子型のウイルスが検出されたとのことです。
そして、この会社の社長は市の調査に対して「 昨年12月下旬にトイレで嘔吐したことがある」 と説明しています。
どうやらこれが全ての始まりのようです。
しかもこの会社は、トイレで嘔吐した後も、 東海屋との取り決めに反して素手で海苔を扱っていたといいます。
なんてこと・・・
「素手で作業をしてはダメ」との決まりがあったにもかかわらず、 この会社は素手で作業をしていました。
ルールさえ守っていれば、 ここまで大きな集団食中毒に発展することはなかったでしょう。
取材に対し、東海屋の田中健二社長は「 衛生管理の指導が十分ではなく申し訳ない」と話しています。
加熱製造段階ならばともかく( ノロウイルスは加熱により死滅させられます)、 加熱後の生食の食品を扱う「いそ小判海苔本舗」こそ特に、 衛生を徹底しなければいけませんでした。
この会社のある大阪市は、「 海苔加工業者は保健所の営業許可の対象ではなく、 海苔を素手で扱うことを禁じる規定もない。 加熱後の工程に盲点があった」と話しています。
市による禁じる規定がなくとも、 ノロウイルスの知識があればよかったことです。
おそらく、東海屋の言う「衛生管理の指導」とは、「 素手では作業を行ってはいけません」 程度の指導だったのではないでしょうか。
「なぜ素手ではダメなのか」
この部分の説明がなかったのだと推測されます。
勿論「なぜ」なんか知らなくとも、 ルールは守るべきなのだと思いますが、 人間はロボットではないため、「理由」 を知らなければどんどん楽な方向を選ぶようになります。
特に今の社会は大企業になればなるほど、マニュアルを渡して「 はい終わり」とするマニュアル社会です。
そういう会社はこの事件を他人事とは思わずに、 ロボット人間を作り上げるマニュアルの負の部分が大事件に発展す るのだということを、肝に銘じてください。
大阪市は3月4日、 給食に出した刻み海苔を製造加工した大阪市北区にある「 いそ小判海苔本舗」に対し、無期限の営業禁止処分にしました。
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いそ小判海苔本舗とは?
すし屋で味わうあのぱりっとした・・・・・高級海苔をお手頃価格で販売しております送料実費で地方へも発送致します引用:いそ小判海苔本舗
高級海苔がお手頃価格なのはいいが、
現時点ではまだ謝罪の言葉はホームページ上では見られません。
元々実にあっさりとしたホームページなので、 ホームページをいじれる人間もいないのではないかと予想されます 。
それに加え、無期限の営業禁止処分となりましたから、 社内は大混乱に陥っているでしょう。
昔ながらの職人さん達は特に、素手で作業をしたがります。
全国規模での流通もなく、 給食も貧相なものだった昔はそれで良かったのかもしれません。
ですが現在は、簡単に大量生産ができ、 あっという間に全国へと流通する手段が整備され、 学校給食も手の込んだメニューを取り入れるようになりました。
昔は刻み海苔なんか給食になきゃないでよかったんですが、 現在はよりリアルな給食が求められているため、 親子丼には刻み海苔を、 ちらし寿司には刻み海苔をふりかける給食が当たり前になっていま す。
学校給食に自社の製品を納品するのであれば、 現在の学校給食の現状も(特に衛生基準について) 知っておくべきです。
■いそ小判海苔本舗ホームページ→http://www.roy.hi-ho.ne.jp/yuming-a/other/isokoban.html
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今後の学校給食の焼き海苔(刻み海苔)の取り扱い
いくら学校給食で厳しい衛生基準を設け徹底していても、 外部の業者から入ってくる食品が適当な衛生でもって作られ、 どっさりノロウイルスに汚染されていては意味が全くありません。
学校給食にとって、納品され、 加熱せずにそのまま子供達の口に入る刻み海苔は、 非常に厳しい衛生的な取り扱いになります。
それがかえってノロウイルスを守る結果になろうとは・・・ こんな皮肉なことはありません。
これからの学校給食はどうなるのでしょうか。
僕の学校給食調理員としての経験から言わせてもらうと、 今後刻み海苔は学校給食では「禁止食材」となるでしょう。
学校給食での禁止食材はいくつかあります。
例えば過去にO-157事件のあった「かいわれ」 もその一つです。
一度バツが付いた食材はもう二度と給食メニューには取り入れない というのが学校給食業界全体の流れです。
例えば「米」のように、なくてはならない食材ならばともかく、 刻み海苔なんてなきゃないでなんとかなります。
どうしても刻み海苔を使いたければ加熱すればいいわけですが、 ノロウイルスの死滅温度は「90度以上で90秒以上の加熱」 です。
この基準を刻み海苔に適用しようとすれば焦げてしまうでしょう。
学校給食には「スチームコンベクションオーブン」と言って、 多機能で立派なオーブンが設置されている施設も多くなってきまし た。
焼き機能はオフにして、スチームのみの加熱であれば、 刻み海苔でも焦げることなく規定の温度と時間は達成できるでしょ う。
しかし、刻み海苔をなぜ給食で使うのかと言えば、 そのパリパリとした食感と、磯の風味を楽しむためです。
スチーム加熱をすることによって、 ただのフニャフニャとした黒い物体と化してしまいます。
果たしてここまでしてどうしても刻み海苔を使いたいという栄養士 がいるでしょうか。
きっといないでしょう。
僕が栄養士でも、 面倒でリスクの高い刻み海苔など使う気にはなりません。
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いそ小判海苔本舗の罪は想像より大きい
今回の事件の業者「いそ小判海苔本舗」の罪は、 集団食中毒の被害にあった人全てに対する罪と、 真面目に衛生基準を守って製造していた他の海苔業者に対する罪で す。
もう二度と学校給食で海苔が使われることはない可能性は非常に高 いですから。
そして我々一般家庭でも、今回の事件で記憶に残るのは、「 いそ小判海苔本舗」という会社名ではなく、 刻み海苔や焼き海苔といった「のり」 という言葉が記憶に残ることになります。
「海苔は危険だから使わない方がいい」
この❝記憶❞に対する罪は非常に重いです。
これから海苔業界全体で「海苔」 に対する信頼回復に全力を上げていくことになるでしょうが、 学校給食に対しては無理です。
衛生面に対して非常に厳しいルールを設けている学校給食において 、❝怪しい食品❞は使う必要もなく、 使う理由を探す栄養士もいるはずもなく、 もし刻み海苔を使用したレシピが下りてくれば、 実際に調理を行う調理員から必ず反発も出るでしょう。
「実際に調理を行うのは我々なんですよ! もし何かあったら責任取れませんよ! 刻み海苔はメニューから外してもらわなければ調理はできません! 」
僕が現役で調理の責任者の立場であったら必ず栄養士に対してこう 言うでしょう。
個人同士の話し合いで解決できなければ、 会社から直接教育委員会へクレームをつけてもらいます。
僕ならば必ずこういう対応をとります。
なので、これからの学校給食に刻み海苔が提供されることは
99.9%ないでしょう。
ノロウイルス原因食材「焼き海苔(刻み海苔)」まとめ
立川市の集団食中毒の原因菌と食材、 業者から発生源と経路まで全て明らかになりました。
しかも、先に起きた和歌山県御坊市集団食中毒、 東京都小平市集団食中毒の原因が全て同じ「刻み海苔」 だったことまで特定されました。
学校給食の調理経験のある僕も本当に驚きました。
それは、学校給食に納品される❝生食❞の食材は「衛生的で安全」 との前提で進めていた今までの学校給食の考え方が、 根底から覆されたからです。
これからの学校給食は、 僕のわずか5ヶ月前の学校給食当時のルールよりも、 更に厳しいルールが設けられるでしょう。
ただでさえ厳しいルールの中で、 こういう事件が起きる度に学校給食調理員の負担は更に増していき ます。
そして学校給食の現場には食中毒だけではなく、 アレルギー対応もあるのだということを忘れてはいけません。
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