立川の小学校集団食中毒から学ぶ〜学校給食における食中毒発生状況事例〜

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こんにちは。元学校給食調理員のテルオ(@undoteruo)です。
 
 
今年も和歌山県御坊市の集団食中毒、東京都立川市の集団食中毒と、大きな集団食中毒が立て続けに発生している状況です。
 
そしてこの2つの事件に共通しているのが「学校給食」という点です。
 
 
今回は、毎年のように発生している学校給食での集団食中毒事件の発生状況の事例と共に、そこから学ぶ注意点をお伝えしていきたいと思います。
 
 




学校給食で発生した集団食中毒の原因物質

 
. ノロウイルス・・・46件
 
. サルモネラ菌・・・18件
 
. ヒスタミン・・・12件
 
. 腸管出血性大腸菌(O-157)・・・7件
 
. 病原性大腸菌(O-157以外)・・・6件
   カンピロバクター・・・6件
 
(平成8年度〜平成27年度)
 
 
和歌山県御坊市の集団食中毒事件の原因でもあったノロウイルスが46件と、圧倒的に多い原因物質がノロウイルスです。
 
次いで、今回の東京都立川市の集団食中毒の原因物質と疑われているサルモネラ菌が続きます。
 
従って、学校給食では特にこの2つの予防対策が重要になってきます。
 
※O-157は平成8年に7事例の発生があったが、学校給食ではそれ以降発生していない。
 
 

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学校給食における集団食中毒発生状況

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このグラフを見て分かるように、平成8年度から平成27年度にかけて、学校給食の食中毒件数は減り続けています。
 
平成8年に発生した小学生5名が犠牲となったO-157事件以降、学校給食の食中毒を何としても減らしていこうという教育委員会の努力の結果でしょう。
 
しかし、発生件数は減り続けてはいますが、未だゼロには至っていません。
 
今年も既に和歌山や立川で大きな集団食中毒事件が2件発生している状況です。
 
つまり、平成28年度も学校給食の食中毒はゼロにはならなかったということです。
 
 
データ上は減り続けているので大きく見れば「良し」とすることも出来ますが、被害者の児童生徒やその保護者にとってみれば減り続けているからなんだ!」ということになると思います。
 
今回の立川市の集団食中毒の犠牲者の数は2月21日時点で1000人に迫ろうという勢いです。
 
この1000人の一人一人、その家族にとってみれば「減り続けている」ことには何の意味もなく、願うのは「犠牲者ゼロ」ただ一つでしょう。
 
 

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学校給食で発生した主な集団食中毒発生状況の事例

 
これまでに発生した学校給食における特に多いノロウイルスとサルモネラ食中毒について、いくつかの事例を見ていきたいと思います。
 
 

集団食中毒発生状況事例1【鳥取県 小学校ノロウイルス食中毒】(平成19年1月28日)

有症者数・・・児童教職員合わせて864名
原因物質・・・ノロウイルス
原因食品・・・「かみかみ和え」の「刻みスルメ」
 
 
感染者の存在が確認されたにも関わらず、調理施設内の調理員の検査がなされず、その後の検査で複数の調理員からノロウイルス感染者がいたことが判明した。
 
感染した調理員の手指を介して「かみかみ和え」をノロウイルスで汚染したとの結論。
 
 
最初の感染者の存在が確認された段階で調理員全員を検査していれば、ここまで被害が拡大することはなかっただろうと思います。
 
ルールが周知徹底されていなかったという事例です。
 
 

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集団食中毒発生状況事例2【静岡県 小学校ノロウイルス食中毒】(平成26年1月15日)

有症者数・・・児童教職員合わせて1271名
原因物質・・・ノロウイルス
原因食品・・・食パン
 
 
感染者がノロウイルスで汚染された手で、食パンを一枚一枚手に取り異物等が無いかの確認を行っていたことが感染を拡大させた。
 
手洗い場の水道からは冷水しか出ない設備だったために手洗いが不十分になり、トイレへは作業ズボンのまま入室していた。
 
 
手洗いとトイレの使い方に加え、食パンを手で一枚一枚確認していたことが逆に感染を拡大してしまう結果となりました。
 
東京都世田谷区の場合には学校給食調理員のトイレの使い方の手順が細かく決められています。
 
これが出来ていればここまで被害が拡大することはなかったかもしれません。
 
 

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集団食中毒発生状況事例3【熊本県 中学校サルモネラ食中毒】(平成9年7月3日)

有症者数・・・生徒教職員合わせて418名
原因物質・・・サルモネラ菌
原因食品・・・「ピーナツ和え」(前々日の生卵の残りによる汚染)
 
 
前々日、中華卵スープに使う鶏卵を撹拌するためにミキサーを使用。前日、同じミキサーをシチューに使うルーに使用。
当日、ピーナツ和えの調味料に同じミキサーを使用していた。
 
ミキサーの刃の部分が分解取り外しできない構造のため生卵のサルモネラ菌が残ってしまい、ピーナツ和えの調味料に菌が混ざってしまったことが原因と結論付けた。
 
前々日の卵のサルモネラ菌がミキサー内に残り、前日のシチューのルーを栄養源としてサルモネラ菌が増殖し、当日のピーナツ和えの調味料に広がったと考えられている。
 
 
現在では、学校給食調理に使用する調理器具や機械類は出来るだけシンプルで出来るだけ全ての部品を取り外して洗うことが出来る構造ものを使用しています。
 
僕の調理員としての経験上、そもそも、全ての部品を取り外して洗浄消毒したとしても、生卵に使用したミキサーを他の調理に使うことは絶対にありません
 
卵の調理器具は卵専用としています。
 
もしかしたら、この事件以降にそのルールが厳格化されたのかもしれません。
 
 
こういう事例を教訓にし、常に安全性が高められていきます。
 
 

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集団食中毒発生状況事例4【北海道 O-157食中毒】(平成24年8月)

これは学校給食の事例ではありませんが、腸管出血性大腸菌O-157がいかに恐ろしい食中毒かを知ってもらうために事例として取り上げます。
 
有症者数・・・169名 死者8名
原因物質・・・ 腸管出血性大腸菌O-157
原因食品・・・白菜の浅漬
 
 
浅漬けの製造所にて発生しました。
 
白菜の消毒殺菌に使う次亜塩素酸Naの濃度を目分量で調整していた。
 
使用するザル等が用途分けされておらず、水洗いのみで使用されていた。
 
床に直置きしたホースで洗浄作業を行っていた。
 
これらのずさんな管理体制によりO-157が拡大したと思われる。
 
 
学校給食ではまず、次亜塩素酸Naに加え、ボールやザル等も含めて、調理器具は基本的に全て熱によって殺菌消毒を行っています。
 
そして、調理器具の用途も厳格に区別されています。
 
床に直置きは絶対禁止とされています。
 
 
これらにより、学校給食での腸管出血性大腸菌O-157の発生は平成8年以降ゼロを保てています。
 
 

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集団食中毒発生状況事例5【静岡県 O-157食中毒】(平成26年7月)

これも学校給食の事例ではありませんが、記憶に新しいO-157の事例として取り上げてみます。
 
有症者数・・・508名
原因物質・・・腸管出血性大腸菌O-157
原因食品・・・冷やしキュウリ
 
 
夏のお祭り会場で発生した事件です。
 
キュウリは会場の車内でミネラルウォーターにより流水洗浄(?)した後、ポリバケツで常温放置。
 
その後、バケツ内でミネラルウォーター、浅漬けの素、氷と共に漬け込む。
 
素手でキュウリに割り箸を指して販売。
 
洗浄不足と常温放置という、ずさんな管理が招いた事件でした。
 
 
学校給食経験者の僕としてはツッコミどころ満載です(笑)。
 
まず、ミネラルウォーターで十分な流水洗浄なんて出来るはずがありません。
 
暑い中での常温放置もあり得ませんし、その上素手で食品を取り扱うなんて学校給食では絶対にしない行為です。
 
しかもミネラルウォーターしかない状況ですから、手洗いも不十分であったと想像できます。
 
 
学校給食ではフルーツ系以外は基本的に野菜も含めて、全ての食材を茹でるや焼くといった方法で加熱を行います。(O-157は75度以上1分以上の加熱で死滅します)
 
野菜の洗浄も、十分な流水でオーバーフロー(タライ等から水を溢れさせて行う洗浄)させながら洗うのが基本です。
 
これらの理由によって、現在の学校給食でのO-157の発生の可能性は極めて低いと言えます。
 
 

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集団食中毒発生状況事例6【和歌山県御坊市小学校 東京都立川市小学校】(平成29年)

まだ記憶に新しい和歌山県御坊市のノロウイルス集団食中毒事件です。
 
未だ給食提供は再開されていません。(3月中に再開予定)
 
原因の食材は「磯和え」と断定されましたが、その経路は結局特定できませんでした。
 
元学校給食調理員の僕の見解では、手洗い不足によりノロウイルスの付着した手で磯和えをドレッシング等と混ぜ合わせる作業を行ったことにより、ノロウイルスが付着したと考えています。
 
 
そして、現在進行中の東京都立川市の集団食中毒事件です。
 
未だ食中毒の種類やその原因物質は特定されていません。
 
そしてその業者も「株式会社グリーンハウス」と特定されています。
 
 
僕としてはサルモネラ食中毒の可能性が高いと思いますが、ノロウイルスの可能性も捨てきれません。
 
早い原因究明が待たれます。
 
 
2017年1月25日に発生した和歌山県御坊市の集団食中毒事件、2017年2月18日に東京都立川市で発生した集団食中毒事件、2017年2月23日に東京都小平市で発生した集団食中毒事件。この3件全ての食中毒の原因は「同じ業者が製造している刻み海苔」であることが判明し、その業者の製造過程でノロウイルスが混入したことが原因であると判明しました。




集団食中毒発生状況まとめ

 
過去の事例をいくつか見てきましたが、そのどれもが現在では詳細に原因や感染経路が特定されています。
 

少なくとも、過去の事例と同じ事故は今後起こさないように、原因究明と、そこから新たなルールを考えていかなければなりません。

 

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