こんにちは。元学校給食調理員のテルオ(@undoteruo)です。
最近またこんなニュースがありました。
和歌山県御坊市の給食センターが調理を担当している幼稚園と小中学校の園児や児童、生徒ら計719人が下痢や嘔吐(おうと)、 発熱などの食中毒症状を訴えていた問題で、県は28日、 発症者の便からノロウイルスが検出されたと発表した。 給食を原因とする集団食中毒と断定した。 引用:日本経済新聞
この時期になると毎年ノロウイルスなどの集団食中毒が発生してい ます。
和歌山の給食センターを運営している東京新宿の会社シダックス大 新東ヒューマンサービスが営業停止処分を受けたようです。
僕も学校給食調理員としての経験があるので、 その集団感染ルートについて具体的に話してみたいと思います。
感染拡大の原因は、実は2つしかありません。例外なくこの2つのことが原因です。
原因ははっきりしていますが、 現時点では完全に防ぐことは不可能です。
その辺の話をしていきます。
原因メニューの特定に挑戦しました↓
原因メニューの特定に挑戦しました↓
もくじ
和歌山集団食中毒事件の概要
2017年1月25日に発生した和歌山県御坊市の集団食中毒事件、2017年2月18日に東京都立川市で発生した集団食中毒事件、2017年2月23日に東京都小平市で発生した集団食中毒事件。この3件全ての食中毒の原因は「同じ業者が製造している刻み海苔」であることが判明し、その業者の製造過程でノロウイルスが混入したことが原因であると判明しました。
和歌山県御坊市で集団食中毒が発生しました。 原因は25日の給食センターで作られた給食。
同市の小学校6校、中学校5校、幼稚園4園、 計651人と教職員68人の計719人が発症。 このほか、 同じ給食を食べた給食センターの調理員6人も発症しました。
25日のメニューは、塩ちゃんこ、 ホウレンソウとモヤシの磯あえなど。
26日午後から27日朝にかけて症状が出、 15人の便を検査した結果全員分からノロウイルスが検出されたと のこと。
県によると、全員快方に向かっているが、 御坊保健所はこの給食センター(シダックス) を28日から2月10日までの14日間、 営業停止処分としました。
御坊市教育委員会はその間、 生徒らに弁当を持参するよう要請する方針とのことです。
2月2日追記→和歌山のノロウイルス集団食中毒事件について県は1日、1月25日の献立「磯和え」からノロウイルスが検出されたと発表しました。
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例外なく2つのことが原因で集団食中毒は起こる
毎年この時期全国でノロウイルスによる集団食中毒が発生しますが 、その原因は例外なく次の2つです。
①手洗い
②手袋の使い方
僕は元学校給食調理員ということもあり、 この手の研修は年に何度も実施していました。
全国の食中毒と感染者数、原因食品、 感染ルートといったものを例として取り上げ、 そこから自分達の会社でも同じようなことを起こさない為に学ぶわ けです。
その結果、 結局は手洗いの不足と手袋の使い方の問題に行き着きます。
一番の問題は、 ウイルスは持っているけど発症しない健康保菌者が関わっている場 合が多くあります。
同じウイルスに触れても発症する人としない人がいます。
発症すれば仕事を休むからいいんですが、 発症しない人は見た目が健康なので普通に給食調理の仕事を行いま す。
見た目は健康なので「自分は健康だから大丈夫」 だと思いスキが生まれます。
その甘えから手洗いが雑になります。
しかしウイルスは持っているわけですから、 ウイルスが付いている手で触れたものを他人が口にすれば感染しま す。
こうしてノロウイルスは広がります。
大体いつもこのパターンで感染が拡大していきます。
ですがお母さん。残念ですが、
集団感染を完全に防ぐのは無理なんです。
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学校給食のノロウイルス集団食中毒が防ぎようがない理由
手洗いの不備はきちんと手洗いをすればいいんですが、 第2の問題の手袋の使い方。
ここに一番の問題があります。
まず、「手洗いをすれば菌、ウイルスは完全に死滅する」 なんてことはありません。
健康な人間ならば手に付いたウイルスは手を洗えばゼロに近付ける ことは出来るかもしれませんが、
既にウイルスに感染してしまっている人はいくら手を洗っても手に付いているノロウイルスをゼロにすること は出来ませんし、元々は体内にあるものですから、 時間が経つに連れてどんどん体内から外へと湧いて出てきます。
封じ込めは不可能です。
それを踏まえた上でこれを見てください。

手袋の箱が家に無かったので、 このティッシュ箱を使い捨て手袋の箱だと思ってください。
業務用の使い捨て手袋は、 このティッシュ箱と同じように中に手袋がたくさん入っていて、 小さく口を開けて取り出すタイプになっています。

このようにして使い捨て手袋を取り出します。
この時点で何か気付きませんか?

手袋を取るときは勿論素手で取ることになります。

このマル印の部分を❝素手❞で摘んで取るわけです。
ということは、 その摘んだ部分にはノロウイルスが付いているんです。
そして手袋ですから、摘んで終わりではありません。
そこから手袋を手にはめるわけです。



もうめちゃくちゃノロウイルス付いちゃってますね。
手袋してからまた手洗いすればいいんじゃないの?
そうですね。それも可能です。( 実際そこまでやっている会社は少ない)
「面倒」は理由になりませんからそこまですればいいわけですが、 それだけでは不十分です。
なぜか?
ハンドペーパーの補充も素手で行っているからです。
ハンドペーパーも手袋して更に手洗いしてから補充すれば?
そうですね。それも可能です。
ですが、 そのハンドペーパーを納品する業者は素手で納品しています。
ではこうするのはどうでしょう。
納品業者のドライバーが運転席から降りた後に手洗いをして手袋を はめて更に手洗いをして給食室へ運び、 受け取る調理員も受取前に手洗いをして手袋をはめて更に手洗いを して受け取り、 そのまま何にも触れずにハンドペーパーを補充する。
「面倒」は言い訳に出来ませんからやればいいんです。
しかし、そこまでやったとしてもまだ不十分です。
手袋をはめて手洗いするということは、

せいぜいこのラインの部分までが限界です。
なぜかというと、 これ以上上まで洗えば手袋の中に水が入ってしまいます。
それがポタポタと垂れればそれこそ不衛生極まりありません。
なので、

どんなに頑張ってもこの部分のノロウイルスを消すことは不可能で す。
よって、 ノロウイルス集団感染を完璧に防ぐことは不可能となります。
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防ぎ方、原因どうこうじゃなく、考えるべきは「 精神の問題」
今回の和歌山ノロウイルス集団食中毒事件のこの部分に注目してく ださい。
「この小学校では、 全校児童337人のうち111人がおう吐や下痢などの症状を訴え ている」
要するに、同じ給食を食べているにも関わらず、 226人の児童は元気でピンピンしてます。
これは一体どういうことなのか。
僕も調理員の間にノロウイルスとインフルエンザを経験しましたが 、その両方にはある共通点がありました。
それは僕の精神状態です。
両方とも精神的に弱っていた時に感染したんです。
ノロウイルスはパワハラ野郎に悩んでいたとき、 インフルエンザは異動先の現場のやり方に苦労していたときでした 。
僕はノロウイルスに感染するかしないかは精神面が大きく影響する と感じています。
実際そうでしたし。
なので、ストレスを溜めないことが重要です。
要するに、パワハラとは、自殺者を生むだけじゃ飽き足らず、 ノロウイルスも生むんですね。
精神的に弱っているときは要注意です。
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家庭でも出来る「85度1分以上の加熱」 よりも最新のノロウイルス予防法
学校給食で採用されているノロウイルスを防ぐための最後の砦的な 方法が温度管理です。
学校給食の調理では必ず加熱後の中心温度を測定します。
↑の過去記事でも話していますが、ノロウイルスの場合は中心温度90度以上で90秒以上の加熱でウ イルスは死滅します。
冬場のノロウイルスの危険性がある食品はこれで対応していました 。
ネットを検索すると皆さんが言われている「 85度以上1分以上の加熱」というものがありますが、 確かに以前はそれで対応していましたが、現在では中心温度「 90度以上で90秒以上の加熱」が最新です。
ちょうど僕が調理員を辞めた去年9月頃に最新の対応に切り替えて いる学校も出てきていました。
ちょっとの時間差なので最新の対応の方が安全ですので、「 90度以上で90秒以上の加熱」の方の採用をおすすめします。
ちなみにO- 157の場合は中心温度75度以上1分以上の加熱で菌は死滅しま す。
学校給食の現場ではノロウイルスが流行り出す10月頃から「 90度以上で90秒以上の加熱」に対応を切り替えます。
ですがいちいち対応を季節や食品によって替えるのは面倒なので、 どちらにも対応できる「90度以上で90秒以上の加熱」 を採用すれば間違いありません。
今の時代「こんがりキツネ色」などという曖昧な感覚は時代遅れです。
僕が実際に学校給食の現場で使っていた中心温度計がこれです。
これで中心の一番火の通りにくい部分、 出来るだけ厚みのある部分を計るんです。
これはめちゃくちゃ使いやすいです!
何が他と違い使いやすいのかというと、他の温度計だと、 例えば魚の温度を測ろうとして魚に温度計を挿すと、 デジタル表示が「55..65..70..72..」 といった具合に緩やかに上昇していくんですが、 この温度計は実際の魚の温度まで一気に上昇します。
気の短いお母さんも時間の無駄が一切ありません。
どうせ買うならコレめちゃくちゃおすすめです!
学校給食という仕事に興味のある方はこちらの記事へ↓
学校給食の1日の仕事内容をざっと説明しています。
テルオ的まとめ
毎年のように集団食中毒が発生し「原因究明が待たれます」 とか言っていますが、原因は毎年例外なく同じです。
手洗いと手袋の使い方。
これ以外にありません。
そして行き着く答えはただ一つ。
防ぎようがない。
ならば調理員に頼るのはもうやめましょう。
そろそろ「精神の問題」 ということを誰か言わなくてはいけません。
2月20日追記
御坊市の教育委員会は、 センターが御坊市保健所の指導を徹底することなどを条件に、 3月中に給食を再開する方針を固めました。
保健所によると、 磯和えのホウレン草は基準通りの温度管理を行い、また、 調理器具や食缶は消毒したものを使用し各学校に配送していたので 、 同保健所は「加熱後、食缶に入れる間にウイルスに汚染された」 と結論づけました。
また、調理後に施設内の消毒清掃を行っていたため、 感染経路は特定できなかったようです。
僕が指摘した「 磯和えをドレッシング等と混ぜ合わせる作業時にノロウイルスが付 着した可能性がある」のはほぼ間違いないでしょう。
2017年1月25日に発生した和歌山県御坊市の集団食中毒事件、2017年2月18日に東京都立川市で発生した集団食中毒事件、2017年2月23日に東京都小平市で発生した集団食中毒事件。この3件全ての食中毒の原因は「同じ業者が製造している刻み海苔」であることが判明し、その業者の製造過程でノロウイルスが混入したことが原因であると判明しました。
■和歌山集団食中毒関連の記事↓
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