飲食店のキッチンアルバイトは何故マニュアル通りに仕事をしないのか?の答えを教えます。

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あなたのお店は、決められたルール通りに調理をしていますか?
 
 
こんにちは。
食品衛生·調理オペレーションコンサルタント
食育·飲食店評論家
こんな肩書でこれから活動を考えている雲藤テルオ(@undoteruo)です。
 
 
最近、僕が18年間アルバイトとして勤めている某大手飲食チェーン店でマネージャーから「社員にならないか」と誘われました。
 
僕の会社の飲食店の社員は全て「店長→複数店舗のマネジメント」これを目指すことになります。
 
つまり、調理を専門的に行う社員は現場にはいません。
 
そんな仕組みの会社です。
 
 
しかし、全店一定以上の料理のクオリティーが必要とされる飲食チェーン店において、なかなか調理技術やルールが徹底されず店舗毎に差が開いてきてしまっているのだと言います。
 
そこで、やっと僕の会社も調理に重きを置く考え方を持ったようで、各店舗の調理衛生指導と調理オペレーション構築のためのチームを立ち上げるということで、僕にその役回りをお願いできないかというお誘いでした。
 
今のところ、誘っているのは僕だけらしく、僕が断ればその構想は延期になり、最悪消滅する可能性もあるとのこと。
 
ちなみに、報酬は店長待遇ということで、ずっとただのアルバイトの僕としては最初から店長待遇というのは、すぐさま飛びつかんばかりの好条件です。
 
責任重大ですが、やりがいは非常に大きく、そんな役回りにただのアルバイトの僕を誘って頂いたということで光栄に感じた僕は、1週間ほど悩み「お断りします」と返事をしました。
 
!?(笑)
 
 
断った理由には2つあります。
 
ブロガーとして今こうして記事を書いているという現在の生活が気に入っているということ。
 
そして、アルバイトがマニュアル通りの作業ができない理由の答えを僕はもう知っているということ。
 
 
社員になって僕が任される仕事は、短期間いろんな店舗へ出向き、会社の方針に則ったマニュアル、つまりは衛生の指導と調理技術の指導を各店舗のアルバイトに施すというものです。
 
18年間末端の調理アルバイトとして働いてきた僕の中では、アルバイトが会社のマニュアルを守れない理由は「指導」というような、“そこではない”と既に答えが出ているので、そんな中でその仕事を引き受けても結局はすぐに辞めることになるだろうと想像がつきました。
 
なので、「僕の衛生の知識とオペレーション構築には需要があるんだな···」と感じた僕は、会社に雇われるのではなくコンサルティング業を自分で行おうという考えに至ったわけです。
 
要するに、政治家になるのではなく、政治評論家になるということです。
 
 
前置きが長くなりましたが今回は、そんな僕が知っている飲食店のキッチンアルバイトがマニュアル通りに仕事をしない理由を解説します。
 
今回は特に、飲食店を営業する経営陣の方に是非とも聞いてもらいたい内容です
 




飲食店のキッチンアルバイトがマニュアル通りに仕事をしない理由

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現場への丸投げ

飲食店の調理アルバイトが会社が決めたマニュアルに則った作業ができない理由はいくつかありますが、大元の原因は会社本部の現場への丸投げ」という、こういう姿勢にあります。
 
 
立派な理想を会社は掲げ
 
丁寧にマニュアルを作り
 
会議で全国の店長に流す
 
そして、実際に現場でこれらをオペレーションに組み込むのは、現場に任されます。悪く言うと、これが丸投げということです。
 
 
実際のオペレーションは各現場の従業員みんなで作り上げるもの
 
 
本部の人間はこういう最もなことを言います。
 
しかし実際には···
 
常駐の社員が1人、もしくは複数店舗を掛け持ちする社員なので常駐する社員がいなく、また、いたとしてもそれは調理には携わらない社員という、こういう今の飲食チェーン業界の状況の中で、特に調理場のオペレーションを現場に任せるというのは現実的ではありません。
 
僕が入社した18年前の昔はそれでも良かったんです。従業員は余るほどいたし、社員も2人3人といたし、社員の料理長もいたし、ベテランのバイトリーダーも1つの店舗に複数人いたので。
 
ですが今はそうではありません。
 
従業員の入れ替わりは激しく、常に人手不足で、社員はいるかいないかもわからなく、昔のベテランバイトリーダーはどんどん卒業していきました。
 
 
つまり、面倒なことは社員がリーダーシップを発揮して動かなくてはいけないのに、そもそも社員もいないので誰も何も決められません。
 

マニュアル

チェーン展開をする飲食店は、本部がマニュアルを作成し各店舗へ流します。
 
今の飲食チェーン店は調理専門職の社員なんて存在しないので、アルバイトはこのマニュアルだけを頼りに仕事をします。
 
僕の飲食チェーン店でも作業の隅々にまでマニュアルが存在しますが、よく言えば丁寧、悪く言えばボリュームが多すぎて複雑なため誰も読まない。
 
こういう状況です。
 
 
マクドナルドのような調理スタイルだと(働いたことがないので想像ですが)冷凍庫から取り出してそのまま油へ入れるといった作業のため、マニュアルも誰もが理解できるような簡単なものでしょうから、それを覚えて守ることはそんなに大変なことではありません。
 
しかし、生肉や生魚を取り扱う調理を行う飲食チェーン店では、これをマニュアル化すると、すごく複雑になります。
 
生肉や生魚は形状や状態が一定ではないため、マニュアルの範囲に収まらないものも存在します。
 
「頑張って考えたんだな」という表現で丁寧に作られたマニュアルは、18年も勤務している僕は理解できますが、これが18歳の大学生では理解できなく、そんな“丁寧”なマニュアルが料理毎や仕込み毎に存在するため、そもそもバイトはそんなもの見ません。
 
 
 
そして、「今までこうだったけど、これからこう変わります」という変更点も、変更がある度にマニュアルが本部から全国の各店舗へ送られてきます。
 
しかし、そこには何故そう変わるのかという理由がありません。
 
 
会社で何らかのマニュアル作成に関わっているという方はここ重要なので覚えておいてください。
 
マニュアル作成において、この「理由」というのは非常に重要です。省略してはいけません。
 
 
詰め込み式教育の日本では普通なのかもしれませんが、何かを覚えるとき、ただ文章を頭に入れるより「理由」から入る方が覚えやすく、応用も効かせられるようになります。
 
自分の好きな趣味とかならばともかく、ただのアルバイトですから、理由が無くただ「ああしろ」「こうしろ」ではすぐに忘れてしまい、同じような調理でも「マニュアルが無いからできない」ということが起こります。
 
「何故こんな面倒な作業をしなければいけないのかというと···」という理由が明記されていれば、料理は違っても作業をパターンとして覚えられるため、同じようなパターンの複数の作業を自分で理由から考え導き出せるようになります。
 
 
マニュアル作成者はこの「理由」を省略しがちです。
 
“マニュアルあるある”ですね。
 

人がいない

何をしたくても、とにかく今の飲食店には人がいません。
 
 
昔のように飲食店にも従業員が大勢いた頃は、現場へ丸投げされてもマニュアルが膨大であっても余裕がありましたが、今は現場に余裕が無いため、社員もアルバイトも出来る限り自分の仕事の範囲を超えた部分まで手を出したがりません。
 
今の従業員一人の仕事量は、僕が入社した18年前と比べて1.8倍くらいにはなっています。18年だけに。
 
トイレへ行く暇もないほどです。
 
 
人がいないのにやることが山ほどある
 
 
これが、昔は“丸投げ”してもやってくれていたのに、今のバイトが会社が思ったような仕事をしてくれない原因です。
 
そしてこれが現場でまかり通っているのは「どうせバレない」からです。
 

どうせバレない

最終的な料理の見た目がメニュー写真と同じような感じのものであれば、それまでの工程でマニュアルを守らなくても現場の社員にはバレませんし、勿論お客様にもバレません。
 
素手で触ってはいけないものを素手で触る。
生野菜は洗わなくてはいけないのに洗ってない。
仕込みが無くなったので禁止されているはずのお湯で短時間で解凍する。
賞味期限切れを提供する。
 
全て飲食店では禁止されていることであっても、最終的な料理の見た目がそれなりであれば、どうせバレません。
 
どうせバレないことをバイトも知っているので、見た目以外は省略しがちです。
 
 
また、これらを現場の社員が知ったとしても、自分の仕事で手一杯の社員は「マニュアルを読んでおいてね」と言うか、気付いていないフリをしがちです。
 
それは、人がいないという問題に加え、社員の衛生·調理の知識不足、要は「社員のマニュアル依存」が原因です。
 

社員のマニュアル依存

調理専門職ではなくても、現場の総責任者の店長ですから、勿論調理の研修も会社では受けているはずです。
 
でもこれも”丸投げ“と同じで「できるできない」は現場社員次第です。
 
会社としては、ルールを社員に教育しているので、それで本部の仕事は終了。「やっていない」のは現場責任者の問題ということになります。
 
「できないのは現場の問題」となるため、現場社員も「できてない」という事実に蓋をしたがります。
 
 
バイトが野菜を洗っていないのを知ってしまえば、本来は「どうすれば人員不足で忙しい中野菜を洗う時間を確保するのか」ということを考えるのが社員の仕事ですが、会社には都合の良いマニュアルというものが存在しているため「マニュアル見てね」と一言言うだけで現場社員の仕事は終了。
 
もしくは、知らないフリをすることで終了。
 
全てを丸投げされ行き場を失った末端のアルバイトは、最終的な見た目に関わらないことは全て省略し終了。
 
 
これが飲食店の現実です。
 
 
現場社員は会社のマニュアルというものを都合よく利用することで、何とか自分の仕事量を軽減し「きちんとマニュアル通りにやるよう指導しています」ということで上へ報告できます。
 
何か大きな事故が起こるまで、こういう飲食店の問題が明るみに出ることはありません。
 

手の混んだ料理ほど単価が低い

飲食店なんかに関わりのない仕事をされている方はもしかしたら初めて知ることかもしれませんが、今の飲食店は、手の混んだ料理ほど単価が低いんです。
 
 
普通、手間ひまをかけた料理は、単価が高いものです。
 
ですが今の飲食チェーンでは違います。
 
安い食材を手間をかけてできるだけ見た目をよく見せて安く売りたがります。
 
これには、今の飲食店を経営する会社の多くが考える女性客を意識した料理」というものに原因があります。
 
 
女性客に喜ばれる商品とは、野菜をふんだんに使い、ヘルシーで、量の少めの小鉢系を何種類かセットにしたものが「女性客が喜ぶ」と考えられています。
 
量が少なく野菜中心なので、手間をかけても単価は低く、この手間というのも現場へ丸投げ状態なので、値段も安い料理になります。
 
 
安いということは、よく注文が入ります。
 
よく注文が入るということは、バイトが大変です。
 
バイトが大変ということは、バイトが辞めていきます。
 
バイトがすぐ辞めるということは、新人だらけになります。
 
新人だらけということは、マニュアルを守れません(見ません)。
 
飲食店の売上はどんどん落ち込み傾向なので、更なる手の混んだメニューを導入します。
 
よりバイトは居着かなく、よりマニュアルなんて守る暇もなくなります。
 
 
この悪循環を、これからの飲食店はどう考えるのか。
 
 
答えは、2つしか僕には考えつきません。
 




これからの飲食店はどちらかに振り切るしかない

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今の飲食店は、お客様が中身を選べるといったメニューや、女性客を意識したメニューや、近年騒がれている食中毒対策で衛生管理を徹底するなど、他社の良いところを全部取り入れようと躍起に見えます。
 
一つのブランドに他社の良い部分を全て取り入れるという飲食店経営は、もう終わらせないといけません。
 
 
最初に「答えを僕はもう知っている」と言いましたが、その答えというのはこの2つのどちらかです。
 
  • 「冷凍庫から取り出して温めるだけ」といった、出来る限りシンプルな調理にする。
     
  • 料理にこだわるならば、店舗毎に調理責任者の社員を常駐させる。(調理責任者は必ず社員で)
 
これからの飲食店はこのどちらかに振り切った経営にするしか道はない」というのが僕の答えです。
 
一つのブランドに“良いもの全部詰め込む方式”の飲食店経営は、この先近い将来必ず破綻を迎えます。
 
 
 
僕はよく、会社本部の人間に会う度に言うことがあります。
 
 
人が足りなくやることも多い中ではバイトは面倒なことはやりたがらないし、それに、いるかいないかも分からない社員にはバレようもないので、現場へ丸投げしても誰もやりませんよ。
現場にやらせたいのであれば「どうすればバイトがやってくれるのか」を本部でも考えてくれませんか?」
 
 
こういうことを僕が言うと、本部の人間はいつも決まってこう言います。
 
 
「面倒だとか面倒じゃないだとか、人がいるとかいないとかじゃなく、決まりなんだから守らなきゃいけないでしょ」
 
 
決まってこう言われます。
 
全くその通りです。
 
その通りですが、飲食店なんかで働かなくてももっと簡単にお小遣いを稼ぐことのできる今の学生の若者の心にこれを根付かせるには、教育からしなければいけません。
 
そんなもん、たかが飲食店にできるはずもありませんし、これこそが現場への丸投げの最たるもので、会社の怠慢だと僕は考えています。
 
 
闇の部分は現場へ丸投げで店長から上がってくる「ちゃんとやってます」の報告や数字を見て経営陣は満足します。
 
現実として、そういうアルバイトを使っていかなくてはいけないのであれば、調理はできるだけ簡単に、無意識にでもルールを守ってしまうようなオペレーションを会社が考えなくてはいけません。
 
こういうことが現実として難しいので、
  • 出来る限りシンプルな調理にする。
  • 店舗毎に調理責任者の社員を常駐させる。
このどちらかの経営に振り切るしかないと僕は考えているわけです
 
 
マニュアルを守らせたいけど、社員もいなく、アルバイトだけで調理させたいのであれば、もっとメニューを絞り込んで出来る限りシンプルな調理方法にするという経営。
 
料理にこだわったお店を展開したいのであれば、すぐに入れ替わる学生アルバイトにマニュアルを渡すだけで丸投げするのではなく、各店舗に調理責任者の社員を常駐させ、その社員に調理の全てを管理させるという経営。
 
 
既に一つ成功したブランドがある会社であれば、コンセプトの異なった新たなブランドを作るハードルはそんなに高くはないのではないでしょうか。
 




評論家が増えるのは、本当はよくはない

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僕は社員の誘いを断り自分でやってみようと決意しました。
 
最初にも話した通り、会社に雇われるのではなく、政治で例えるならば、政治家になるのではなく政治評論家になるというようなことです。
 
良く言えば「意識が高い」と言えますが、悪く言えば「現実から逃げる」とも言えます。
 
テレビの政治家と評論家の激論ではよく政治家が「評論家は現実をわかっていない。好き勝手なことばかり言う」と言います。
 
現場を経験した評論家はまだいいものの、現場経験のない評論家は現実を見ずに(または無視し)理想ばかりを語ります。
 
これでは現場へ丸投げする会社経営陣とさほど変わりません。
 
 
僕の活動は、理想と現実をマッチングさせるための活動にしていきたいと考えています。
 
これはおそらく、末端のアルバイトで調理を18年もしてきた僕のような人間にしかできないものだと確信しています。
 
 
ですがどちらにしろ、評論家ばかりが増えるのはいいことではありません。
 
評論家の言っていることなど現場スタッフからすれば、会社経営陣の話しよりも聞く耳を持たないであろうと容易に想像できるからです
 
僕のような人間が増えないように、飲食店には独自に早く新しい時代の営業方法に気付いてほしいと願っています。
 
ですがどうせ無理なので、僕が評論家やコンサルティングをやるんです。
 




テルオのまとめ

まとめ-2
 
これからの飲食店のあり方は
  • 出来る限りシンプルな調理にする。
  • 店舗毎に調理責任者の社員を常駐させる。
このどちらかに振り切った経営しか道はないというのが僕の答えです。
 
 
この前僕を社員にと誘ってくれたマネージャーは「お前の言ってることは最もだ」と言っていました。
 
言っていましたが···、会社に雇われている立場の人間なので、その“最も”な意見を会社へ言うにはもっと出世しなければ言えることではありません。
 
僕の場合は、もう既に自分の中で答えが出ているのに、その答えを胸に秘めたまま社長になるまで会社の方針に従い頑張ることなど、できない人間です。
 
僕と同じような考え方の人間は、僕と同じように評論家やコンサルタントになり独立するか、就職Shopなどの転職サイトで自分の理想を実現できそうな会社に就職するかの、どちらかの道を選ぶしかありません。
 
 
飲食店を経営されている方はこんなブロクなんて読まないと思いますし、読んでも「そんな理想は会社経営してから言え」と言われそうですが、しかし、答えは間違いなく僕が言っている2つの方法です。
 
 
もしくは「AI化」に全力で取り組むか。になるでしょう。
 
事実、こちらの方法を考えている経営者が多いでしょう。
 
 
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