飲食店の人手不足の理由は「アルバイトの社員化」が原因。バイトの地位向上の裏側

baito
 
こんにちは。バイトリーダーのテルオ(@undoteruo)です。
 
 
僕は以前務めていた学校給食という仕事を辞めて、現在はロガーをやりながら、それだけではまだ食べてはいけないので飲食店でバイトをしているんですが、僕の飲食店でも人手不足が深刻です。
 
飲食店の仕事は3K仕事の代表格です。
 
3Kというのは
  • 汚い
  • きつい
  • 危険
 
飲食店の場合「危険」は少ないはずだったんですが、ある牛丼チェーン店の度重なる強盗事件のおかげで、飲食業でも見事3K全てを満たすことになってしまいました。
 
 
僕の働いている飲食店は東京の大きな駅の地下街にあるため、営業中に突然薬物中毒者が厨房に乱入してきたこともありました。包丁を握られていたら大事件になっているところでした。
 
 
また、営業終了後に僕がゴミを捨てて外から帰ってくると、シャッターをくぐろうとしていた黒人と目が合ったこともありました。勿論僕は怖いので目をそらして「何も見ていませんよ」的な顔しましたが(笑)、黒人は何も盗らずに逃げていきました。
 
 
店の周りで傷害事件も何度も目撃してきました。
 
 
近くのトイレでレイプ事件が発生したことがあり、その時は僕のお店に刑事がやってきてアルバイトスタッフが事情聴取されたことまでありました。(そのスタッフは勿論無実でしたが)
 
 
この3Kは飲食店の仕事が敬遠される理由ですが、それらを分かった上で入ってきてくれるアルバイトもまだまだいます。
 
ですが、実際に飲食店にバイトで入ってきた人間がやっぱり辞めていく原因には、この中の「きつい」が一番の原因だと感じます。
 




バイトが集まっても逃げていく原因

 
飲食店に入ってきたバイトが辞めていく原因は
  • やっぱり汚い
  • やっぱりきつい
  • やっぱり危険
 
つまり、「噂が事実だったから」「噂以上だったから」辞めていくわけなんですが、この中でも特に「きつい」にバイトが辞めていく最大の原因があると僕は日々の仕事から感じています。
 
 
「きつい」とは、人手不足なためにバイト一人の負担が半端ないというのも勿論ありますが、バイトの社員化が最大のきつい原因だと思われます。
 

アルバイトの地位向上は必要なのか

 
何故アルバイトをするのか。
 
アルバイトをしている人の理由は大体次のどれかではないでしょうか。
 
  1. 学生で勉強の合間にお金を得たい人
  2. 他にやりたいこと、趣味、夢があるので、とりあえずの生活資金を得るため
  3. 本業の賃金だけでは足りないので副業として
  4. 正社員としては働きたくない人
  5. 就職活動を行いながら、正社員採用までのつなぎとして
  6. 年齢や学歴の問題などで本当は正社員になりたいけどなれないので仕方なく
 
アルバイトをしている理由としては、大体このどれかに分類されると思います。
 
そして現在でも飲食店でアルバイトをしている僕の印象として、僕の飲食店でアルバイトをしている人は①〜⑤の理由が100%です。⑥は現在も過去も含めて、僕の飲食店の場合には一人も存在していません。
 
 
勿論お店が違えば変わるだろうし、その業種によっても違いはあるでしょう。
 
例えば、想像になってしまいますが、自動車製造工場の契約社員とか。
 
本当は技術職の正社員として働きたいけど、今はアルバイトや派遣や契約社員としての雇用しかないので頑張って働きながら、いつかは正社員として雇ってもらいたいという希望を持って働いている人
 
 
ですが飲食店の場合、このパターンはかなり少ないと思います。
 
飲食店では正規雇用を目指して働いているアルバイトはほぼいません。
 
 
飲食店ではほぼいないというのが現実ではありますが、「アルバイトの地位向上」なんて最近よくどっかの議員さんとかが口にします
 
この流れをいいことに、飲食店ではアルバイトに見てくれだけの責任」を与えようとしています。
 
これは、ハッキリ言って、飲食店で働くアルバイトとしては迷惑でしかなく、飲食店からアルバイトが逃げていく最大の原因になっています。
 

アルバイトの社員化とは?「責任者はバイトではない」

 
僕が働いている飲食店では、アルバイトに「責任者」を名乗らせています。
 
社員がバイトに責任者の称号を与えるとき、僕の印象、「あなたの仕事は皆のお手本になるし評価しているので責任者にしてあげますよ」という❝与えてあげますよ❞的なニュアンスを感じます。
 
これが「アルバイトの地位向上」を利用した悪い例で、優秀なアルバイトの向上心を利用し、責任者を押し付けているだけです。
 
勿論、アルバイトでも責任者をやりたい人はいいんでしょうが、ほとんどのアルバイトはそんなものやりたくはありません。責任者をやりたいと思っているアルバイトはとっくに正社員になっています
 
 
バイトの地位向上とは、「正社員との待遇の格差を縮める」というのが本来の意味だと思いますが、待遇格差は変わらずに責任者という肩書だけをアルバイトに与えて、さも「バイトでも責任者を任せていますよ!地位向上に努めていますよ!」と、これを地位向上だとしています。
 
たかだか10円20円の時給アップで何が責任者で、何が地位向上なのでしょう。
 
 
飲食店の場合ですが、飲食店で働くアルバイトは別に地位向上なんて求めてはいません。
 
アルバイトとして、アルバイトをしてお金を得たいだけなんです。
 
飲食店のアルバイト責任者は、会社にもよると思いますが、発注、シフト作成、クレーム対応、棚卸しのまとめ事務作業(パソコン入力等)、僕の飲食店の場合にはバイトの面接までやらせています。
 
バイトがバイトの面接をしているんですよ。ちょっと信じられません。
 
勿論これらを一人のバイト責任者が全てできるはずもないので、他の責任者候補的なバイトスタッフに割り振られます。
 
 
これらは10数年前まではバイトの仕事として考えられませんでしたが、現在では通常の流れとしてバイトの仕事に組み込まれています。
 
 
連絡事項や次から始まる新商品の内容、お中元やおせちのノルマ達成状況等の情報はグループラインで流れてきます。
 
僕の飲食店では時給の発生しない勤務時間外までラインをチェックしなくてはいけません。
 
 
パソコンの事務作業を任されている真面目なアルバイトスタッフは、休憩中にパソコンと向かい合っています。
 
僕がもし店長ならば「休憩中は仕事はするな!」と言うと思いますが、僕のバイトの社員は何も言ってはくれません。
 
 
普通のアルバイトはこんな業務はやりたくはないので辞めていくわけです。
 
「バイトが集まらない!人が足りない!」といつも言っていますが、集まらないんじゃないんです。
 
せっかく集まったバイトを会社が逃しているんです。
 
 
このアルバイトの社員化を改善しなければいつまで経っても飲食店の人手不足は改善されません。
 




アルバイトの社員化は正社員の育成にも悪影響となっている

 
アルバイトだけではなく、飲食店の正社員も定着率が年々下がっています。
 
 
飲食チェーン店では店長不在店も多いと思います。
 
いることはいますが、何店舗もの店長を兼任しているため、基本的に店長はお店にいません。
 
僕のバイト先の飲食店のスタッフの構成はこうです。
 
  • 店長
  • 社員A
  • 社員B
  • 店長不在時の責任者(アルバイト)
  • その他バイトスタッフ
 
こういうことになっています。
 
 
社員が昇格するためには試験があり、それに合格した社員が店長代理→店長となれるんですが、この社員ABはまだ試験を受けていないか試験に不合格だったために何の役職も与えられていない一般社員です。
 
なので、店長不在時に何らかのトラブルが起きた際にはアルバイトの責任者が対応することになります。
 
社員がいるにも関わらずアルバイトがクレーム対応をするんです。
 
こういう、アルバイトが社員化し、社員がアルバイト化するという逆転現象が年々高まっています。
 
 
これによって僕の飲食店の会社では今何が起こっているのかというと、店長不足です。
 
社員は大勢いるんですが、試験に合格できない社員がいる為に店長が不足しているんです。
 
社員でも試験に合格しないと昇格はないので、本来その社員が負うべき責任はアルバイトが負うことになるわけですが、「そういうルールなんだから仕方がない」と、いつまでもアルバイト感覚でいる社員が年々増えてきています。
 
 
更に僕の飲食店では、その教育もシステム化されていて、仕事の隅々にまでマニュアルというものが存在しています。
 
社員の昇格試験は基本的にマニュアルに則って行われるため、アルバイトに教わった仕事をそのまま鵜呑みに覚えていたのでは合格ができません。
 
人が人にものを教えるときはどうしても主観が入ってしまうものなので、マニュアルとは違いが出てきてしまいます。
 
昔は先輩に仕事を教わって成長するものでしたが、今ではマニュアルに仕事を教わらなくてはいけない時代です。
 
人間の先輩だったら向こうから「教えてあげるよ」と近付いてくることもありましたが、マニュアルは向こうからは近付いて来てくれません。
 
自分で時間を確保し、自分でマニュアルの本棚の前に立ち、自分でそのページを探して読まなくてはいけません。
 
人に教わるだけの昔より個人のステップアップのハードルは高くなっています。
 
 
アルバイトでも責任者を一生懸命こなし、社員が単なる皿洗いをしている時でもアルバイトが動き回って仕事をします。
 
店長不足時でもクレームがあればアルバイト同士相談し解決策を導き出します。
 
発注業務等の事務作業、電話対応もアルバイトがこなし、アルバイトが社員に仕事の指示を出します。
 
アルバイトには何の責任も発生しないはずなんですが、真面目で責任感の強い日本人はこれらの仕事をアルバイトの立場からもこなします。
 
 
アルバイトの責任者が何でもやってくれる今の飲食店で社員が自らステップアップするためには、自分で勉強時間を確保する必要がありますが、それができる人間は少ないので結果的に店長まで到達することなく辞めていく社員が大勢います。
 
会社としては優秀な人間だけが残るシステムなのでこれでいいのかもしれません。
 
ですが日本の場合、これで負担が増すのは真面目な末端のアルバイトスタッフになるわけです。
 
 
こういう必要以上の負担を嫌うアルバイトはすぐに辞めてしまいますし、昔ならばよかった人に教わるだけしかできない社員も長くは続きません。
 

AI化で社員もバイトも必要なくなる時代

 
飲食店には社員もアルバイトも年々寄り付かなくなり人手不足が深刻です。
 
アルバイトの社員化がその原因だと僕は考えているわけですが、もしこの僕の話を飲食店の経営者が聞いて「あ〜なるほど!」となったとしても、改善されることはないでしょう。
 
なぜなら、飲食店がこれから力を入れるのはAI(人工知能)だからです。
 
人が集まらないのであれば、今の時代の流れのAI化にすればこれは改善されます。
 
 
これによって何が起こるのかというと、中間の仕事のできる時給の高いアルバイトは必要なくなり、マニュアルを自分で見につけることのできない社員も今よりももっと早い段階で切られることになります。
 
アルバイトは時給の低い学生数人でよく、社員は優秀な人間だけが本社で管理する時代になります。
 
 
なので、「人手が足りない!何とかしてくれ!」という末端アルバイトの不満は会社はもう少し我慢すれば消え失せ、低賃金アルバイトの争奪戦になっていきます。
 
「人手不足を何とかしてくれ!」という今のアルバイトの不満は早くて10年後には贅沢な悩みとなるでしょう。
 
社員としても、皿洗いで数年生き永らえるような時代ももうすぐ終わります。
 
今でも数年でこういう社員は切られますが、将来は数ヶ月で切られることになるでしょう。
 




テルオ的まとめ

 
まとめてみると、これからは飲食店でも急速にAI化の流れが進むことになるので、飲食店の「人手不足の改善に力を入れる」とは、人を集めることではなく「AIの導入に力を入れる」ということになっていきます。
 
なので、多くの飲食店アルバイトが望む「もっと人を増やしてくれ!」という改善は今後見込めません。
 
 
更に人を減らしてAI化
 
 
これが飲食店の上層部が今考えていることです。
 
 
ちなみに、僕の以前の仕事の学校給食「人間が給食を作っている」というのが最大のウリのため、今後も人間が働くことができる数少ない調理の仕事となるでしょう。
 
 
この記事を書き始めた最初は、飲食店にアルバイトがなぜ定着しないのか会社に教えてあげたくて書いていたんですが、結果的に、それがわかったとしても「改善はされないな・・・」というところに行き着いてしまいました。
 
飲食業の人手不足は結局はAIに頼ることで解決を見出すことが確実だと、書きながら感じたからです。
 
 
ただ、これによってわかったことが一つだけあります。
 
「好きなことを仕事にするなんて特別な人間だけができることだ」と言われていますが、これからの時代は「好きなことしか仕事にできない」時代になることはほぼ間違いないという事実です。

 
 
 
 
 
 

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