立川の集団食中毒事件から学ぶ〜学校給食における食中毒予防対策と対応(ノロウイルス編)〜

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こんにちは。元学校給食調理員のテルオ(@undoteruo)です。
 
 
 
そしてこの2つの事件に共通しているのが「学校給食」という点です。
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今回の内容は、特に学校給食で発生リスクの高いノロウイルスを中心に、食中毒の予防対策と、食中毒発生時の実際の学校給食の対応を紹介していこうと思います。
 
学校給食では食中毒には非常に敏感で、その対策や対応が細かくマニュアル化されています。
 
その為、これを知っていれば家庭でも食中毒の予防や拡大防止に役に立つかもしれません。
 
大切な家族を食中毒から守るために、是非最後まで読んで頭の中に入れておいてください。
 
 




感染を予防するためには【学校給食マニュアル】

 
感染を予防するためには調理従事者一人一人が気をつけることが大切です。
 
これが大前提。
 
特に、集団食中毒に拡大するリスクの高いノロウイルスが流行り出す冬場は、この考え方が非常に重要です。
 
 

手洗い

 
ノロウイルス感染者の多くは、人の手を介して感染が拡大します。
トイレ使用後、食事前、調理前は必ず手を洗います。
 
石鹸で十分に手をこすり洗いし、水で十分に流す。
 
手洗い後はタオルを共用せず、ペーパータオルを使うか、個人用タオルを使用。
 
水道の蛇口は手を洗う前に手で触れるので、手と一緒に洗うかペーパータオルを利用して蛇口を締める。
 
 
食中毒予防のための学校給食(東京都世田谷区基準)トイレの使い方の記事↓
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嘔吐物の処理

 
嘔吐物の処理時とその後は窓を大きく開けて換気する。(室内にウイルスを滞留させないため)
 
換気扇がある場合は換気扇も必ず使用する。
 
嘔吐物の拭き取りと消毒が不十分だと、嘔吐物が乾燥した後に室内にウイルスが拡散する可能性があるので、必ず窓を大きく開けて換気を行います。
 
 

入浴

 
湯船のお湯を通してウイルスに感染する危険性があるため、症状がある人は最後に浴槽に入るかシャワーのみにする。
 
 

消毒(次亜塩素酸Naの作り方)

 
直接手で触れる場所はウイルスに汚染されている可能性があります
また、子供は玩具などを直接口にしてしまう場合が多いので、二次感染を防ぐために消毒が重要です。
 
手で触れる場所は定期的に0.02%の次亜塩素酸Naに浸した布で拭く。
 
ノロウイルス感染が疑われる人が周りにいた場合、汚染されやすいトイレやその周辺を中心に消毒の頻度を増やす。
 
次亜塩素酸Naは金属を腐食させるため、金属部分の消毒後は10程度たったら水拭きをする。
塩素ガス発生の可能性があるので、使用時は十分に換気をする。
 
調理器具や子供の玩具を次亜塩素酸Naで消毒する場合は、「食品添加物」と記載の塩素系漂白剤を使用する。
 
ノロウイルスはアルコール消毒では十分な効果が期待できないため、必ず塩素消毒を用いる。
 
 
0.02%次亜塩素酸Na希釈液の作り方
 
原液の濃度が6%の場合には300倍に薄める。
(原液10mlを水3リットルの水で薄める)
 
 
学校給食基準のおすすめ調理器具や消毒液を紹介しています↓
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調理者向けの食中毒予防【学校給食マニュアル】

 
食中毒は食事を通して感染が拡大することが多いので、まず食中毒リスクのある食品を食べないこと(食べる場合にはよく加熱)、調理者が感染しないこと、ウイルスを食品につけない事が大切です
 
 

食中毒予防の原則

 
植物由来食品の感染予防方法
 
二枚貝(カキ、アサリ、シジミ等)はノロウイルスが蓄積している可能性があるので、生食は原則禁止とし、調理の際は中心温度が「90度以上で90秒以上の加熱」になるように加熱し、ウイルスを確実に殺菌する。
 
O-157やサルモネラは「75度以上で1分以上の加熱」で殺菌出来る。
 
家庭では使い分けは混乱して面倒なので、全ての食材でノロウイルス基準の「90度以上で90秒以上の加熱」がより安全な方法です。
 
 
 
調理器具からの感染予防方法
 
特に二枚貝に使用した調理器具、シンク等は十分に洗浄し、「90度以上で90秒以上の加熱」または、「0.02%の次亜塩素酸Na」で消毒してから他の食品に使用する。
 
 
調理者からの食品汚染予防方法
 
食品の盛りつけ等は素手で行わず、必ず使い捨て手袋を使用する。
 
感染が疑われる場合には調理には携わらない。
 
手洗いは石鹸でよくこすり洗いし、水で十分に洗い流すことが重要
 
いくら手洗いをきちんと行ってもいてもウイルスはゼロにはならないので、素手で調理を行わないことが感染リスクをさらに軽減することに繋がります。
 
使い捨て手袋も完璧ではないため、「手袋をしているから安全」との考え方も危険です。
 
 
 

調理従事者が感染しないために

 
食中毒発生時の注意点
 
食中毒発生時の食器回収は使い捨て手袋を使用し、食べ残しに直接手で触れないようにする。
 
嘔吐物で汚れた食器等は、調理場外で消毒してから調理場へ戻す
 
 
日常生活での注意点
 
仕事外の日常でも生ものの食事に注意し、手洗い消毒を徹底し、家族が下痢や嘔吐をした際には手順に従って行動すると共に、その際には必ず職場へ報告し、絶対に個人の考えで行動しないことが重要。
 
 
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感染者、食中毒発生時の対応【学校給食マニュアル】

 
学校給食では感染拡大を防止するために、感染症や食中毒が発生した時にとる行動が予め決められています。
 
 

1.発生状況の把握

 
症状の確認
 
下痢、嘔吐、発熱、その他の症状について確認する
 
 
施設全体の状況の把握
 
日時、棟、フロア、部屋別の発症状況を把握する。
 
受診状況、診断名、検査結果および治療内容を確認する。
 
普段の有症者と比較する。
 
学校給食では、ノロウイルス感染の有無についての検査は独自の検査機関を利用しているため迅速に結果が出せますが、個人が受診する病院では検査に時間がかかるため検査を受けることに意味がありません。
 

2.感染拡大の防止

 
職員への周知
 
施設管理者は日頃から連絡方法等を整備しておき、食中毒等の発生状況を関係職員に周知し、対応の徹底を図る。
 
 
感染拡大防止策
 
手洗い、排泄物や嘔吐物の処理方法を徹底して実行する。
 
消毒の頻度を増やすなど、発生時に対応した施設内消毒を実施する
 
 

3.関係機関への連絡

 
施設管理医へ連絡
 
重篤化を防ぐため、適切な医療及び指示を受ける。
 
 
家庭へ連絡
 
発生状況を説明し、健康調査や二次感染予防について協力を依頼する。
 
 
保健所、教育委員会、保育課、社会福祉施設等主管部へ報告
 
感染症や食中毒が疑われる場合には、保健所、教育委員会、保育課、社会福祉施設等主管部に連絡して、対応についての指示を受ける
 
 
報告の基準
 
ノロウイルスによる感染性胃腸炎と診断された、またはノロウイルス感染が疑われる死亡者または重篤患者が1週間以内に2名以上発生した場合。
 
ノロウイルスの感染が疑われる者が10名以上、または全利用者の半数以上発生した場合。
 
①や②に該当しない場合であっても、嘔吐や下痢症状のある者の数が通常を上回る場合。
 
 

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学校給食で集団食中毒が発生する原因

 
学校給食では食中毒の予防対策と、食中毒発生時の対応が細かく決められています。
 
これらを確実に一人一人が実行すれば、食中毒感染者が発生しても集団食中毒までは拡大しません。
 
しかしながら、毎年のように集団食中毒事件は発生しているのが現状です。
 
それは何故かと言えば、ウイルスや菌は目に見えないものだということと、もう一つ、「個人的に勝手に判断」してしまうことが感染の拡大に繋がると、僕は学校給食調理員としての経験からそう考えています。
 
 
関わる人間が多くなればなるほど、人間一人一人を管理するのは難しくなります。
 
それが毎年のように発生する集団食中毒の大きな原因かなと感じます。
 
人間を使う以上、これは非常に難しい問題です。
 
 
学歴の話はしたくはありませんし、それだけではないと思いますが、学校給食調理員は医者のように難しい医師免許を持っているわけではありませんし、民間委託の場合、公務員のような高い給料を貰っているわけでもありません。
 
 
学校給食で働くために必要な資格の調理師免許は中卒で受験できますし、その合格率は60%を大きく超えています。
 
学校給食で働く調理員の多くは、副業としてアルバイトを掛け持ちして働いています。(僕の経験上)
 
勿論、意識の高い立派な調理員を僕も何人も知ってはいますが、食中毒だけではなく、命の危険の高いアレルギー食も ❝たかが調理師❞ に任せているのが学校給食の現状です。
 
しかも、命を守っている報酬にしてはあまりにも低い賃金。
 
こんな学校給食の現状では食中毒もさることながら、アレルギー事故も今後続いていくでしょう。
 
 
学校給食で集団食中毒を減らし、更にアレルギー事故も減らしたいのであれば、
 
学校給食に特化した特別な資格制度
給料の見直し(賃金アップ)
 
学校給食調理員として現場で働いていた経験のある僕が言えるのは、この二つが今後の安全な学校給食運営に必要な方向性だと思います。
 




テルオ的まとめ

 
今日は学校給食における食中毒の予防対策と、食中毒発生時の対応を紹介してきました。
 
最後には少し不安を煽るような内容になってしまいましたが、決められたルールを一人一人がしっかり守っていれば集団食中毒感染拡大は抑えられます。
 
今回話してきた内容は家庭でも食中毒予防に対して役に立つ情報だと思うので、是非これらの学校給食ルールを頭に入れながら、家族の命を守ることに役立てて頂ければなと思います。
 
 

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